スキンケアの基本

今、「肌を治す」ことを諦め続けている。

~シワ・シミ・毛穴を一つずつ追いかける美容から、「肌そのもの」を整える美容へ~

 

「今年、注目の美容成分は何ですか?」

 

美容業界やSNS、女性誌では、毎年のようにこの話題で盛り上がります。アゼライン酸、PDRN、エクソソーム、NMN、レチノール……。

新しい成分が登場するたびに、

「次はこれがすごい」

「この成分なら、今度こそ肌が変わるかもしれない」

と期待が集まり、それを配合した化粧品が次々と発売されます。

もちろん、新しい研究や技術の進歩には大きな価値があります。これまで難しいとされてきた肌悩みに、新しい可能性をもたらしてくれる成分もあります。

私も仕事柄、国内外の皮膚科学や化粧品研究に触れる機会がありますが、ここ数年の研究や美容業界の動きを追う中で、ある変化を感じるようになりました。

それは、美容業界が「肌を治すこと」を諦め続けてしまっている、ということです。

もともと、化粧品には肌を治すという表現は使ってはいけないルールもありますし、医薬部外品でも配合上限があって、治すのを目的としたものではないのが事実です。でも、皆さんは肌が治ると思って化粧品を使うというのが本音だと思います。

そのため、提供する側は、その要望に応えようと技術の向上や特別な成分を生み出すことに必死です。さらに、

・シワだけを消そうとする。

・シミだけを薄くしようとする。

・毛穴だけを目立たなくしようとする。

そのように、一つひとつの悩みを切り取って、その部分だけを化粧品の力で何とかしようとする提案の仕方が多くありました。しかし、みんな気づき始めているのです。

外から肌に与えすぎると結果的にバリア機能が低下する

肌そのものが主役へ

肌はシワやシミや毛穴など複合で悩みは存在しているわけで、単独でないから化粧品選びも複雑になって混乱してしまうのです。

水分を抱え、外部刺激から体を守り、新しい角層をつくりながら、全体がつながって働いています。

そのため近年は、一つの悩みだけを見るのではなく、

・キメが整っているか

・なめらかさがあるか

・透明感やツヤがあるか

・水分が保たれているか

・刺激を受けにくい状態か

といった、肌全体の状態を捉える「肌の質」という考え方があらためて注目されるようになってきました。

つまり、これからの美容が目指すのは、悩みを一つずつ追いかけ続けるのではなく、悩みが起こりにくい肌そのものを育てること。

その視点に立つと、スキンケアの主役も変わってくるのです。

これまでは、化粧品や美容成分が主役でしたが、これからは、肌そのものが主役です。

化粧品は、肌を思いどおりに変える存在ではなく、肌が本来持っている働きを邪魔せず、必要な部分を補うサポート役になっていくのだと思います。

 

肌は、自分で保湿しているのです

 

「乾燥するから保湿力の高い化粧水をつけなきゃ」

 

「カサつくから濃厚なクリームを塗り重ねなきゃ」

 

スキンケアに悩む多くの方が、このように「外からの水分補給や油分による蓋」に頼る毎日を送っていらっしゃいます。

しかし、実は皮膚科学的な真実は違います。

 

私たちの肌の水分を本当に保ち、みずみずしさを維持しているのは、肌の角層の中、つまり私たちの体の一部として最初から備わっている NMF(天然保湿因子)という、信じられないほど緻密で優れた仕組みがあるからなのです。

 

NMFは、アミノ酸やPCA(ピロリドンカルボン酸)、乳酸などで構成されており、これらが磁石のように水分を強力に抱え込み、過酷な乾燥環境から肌を守る役割を一身に担っています。

 

つまり、

「肌は、自分自身の力で、自分で保湿している」

これが、真実であり、人が生まれながらにして持っている本来のあたりまえの姿なのです。

化粧品は、あくまでもそれらをサポートする役目すなわち脇役であり、主役は肌本来の姿なんですね。

 

どれほど優れた化粧品であっても、肌が本来持っているこの自前の保湿機能をスムーズに働かせられることにはかなわないのです。

この「肌の主役、化粧品サポート」という考え方は、最近の最先端の皮膚科学においても、

 

ますますその重要性が叫ばれるようになっています。

 

外から過剰に与えすぎると、肌は「自分で潤いを作らなくていいんだ」と怠けてしまい、

 

結果的にバリア機能が低下してしまう。

 

だからこそ、肌自身の保湿力を邪魔せず、その働きに優しく寄り添うことが何よりも大切なのです。

 

家づくりに例えると

 

家づくりに例えると、とても分かりやすい

 

このお話を、私たちの暮らしに欠かせない「家づくり」に例えてみると、スキンケアの本質がとてもシンプルに見えてきますよ。

 

新しく家を建てるとき、先に思い描いた家具を買い揃えてしまう方はほとんどいらっしゃらないと思います。

 

家を建てるときに、まず何よりも大切で、絶対に妥協してはならないのは

 

強固な「土台」

頑丈な「柱」

隙間のない「壁」

雨風を防ぐ「屋根」ですね

 

これらがしっかりと設計され、丁寧に作られていなければ、どんなに素晴らしいイメージした家具を並べたところで、しっくりこないと思います。

 

長く快適に、安心して暮らすために家の基礎がしっかりしていることが大条件だと思います。

 

実は、私たちの肌もこれと全く同じ構造です。

 

どれほどノーベル賞級の発見と言われる高価な美容液や、SNSで大流行している最新の成分を肌に塗り重ねたとしても、肌の土台である「角層」がボロボロで、柱や壁である「バリア機能」が十分に働いていない状態であれば、その高価な成分は肌に留まることすらできず、蒸発するか、あるいは弱った肌への刺激となってトラブルを引き起こしてしまいます。

 

良い成分でもなんでもその力を発揮できないのです。

 

最近、美容のメディアでも「肌質改善」という言葉を非常によく見聞きするようになりましたね。

 

濁りのない「透明感」や 細かく整然とした「キメ」、 内側から光輝くような「ツヤ感」そして、ふわふわでなめらかな「手触り」などこうした、私たちが「あの人の肌、すごく綺麗だな」と感じる全体的な印象は、決して特定のひとつの流行美容成分だけで作られるものではないということは、多くの方がすでに体験されていることと思います。

 

365日24時間、私たちが眠っている間も休むことなく働き続けている角層、細胞をいっぱいに満たすNMF、そして外敵から私たちを死守しているバリア機能が、毎日「健やかな状態になるために」コツコツと整えていることによってのみ生み出される、その成果が「キレイな肌」となるのです。

新しい成分をどう考えるかで変わる

 

私は、「新しい成分の誕生」「サイエンスの進歩に意味はない」と言いたいわけでなく、皮膚科学は日々、目覚ましいスピードで進歩しています。

 

アレルギーに悩む人のための画期的な成分や、治療の領域に近い革新的なアプローチなど、新しい技術や研究のおかげで、長年深い肌悩みに苦しんできた多くの人々が救われ、笑顔を取り戻しているのも事実です。

 

科学の進歩は素晴らしいものですし、私たちもその恩恵(キチンナノファイバーなど)に深く感謝しています。

 

しかし、その研究がどこまでも進み、極限まで深められれば深められるほど、世界のトップレベルの研究者たちが最後に必ず戻ってくる「約束の場所」があります。

 

それが、 「肌そのもの」なんだと思うのです。

 

肌が本来持っている、太古の昔から変わらない完璧な仕組みを、まずは正しく理解すること。

 

その自然な仕組みを、私たちの誤ったケアや過剰なケアによって「邪魔しないこと」

 

 

そして、肌が自力で立ち上がろうとする力を、必要なときにだけ、そっと後ろから支えてあげること。

 

これこそが、情報が溢れかえるこれからの時代に、私たちスキンケアブランド、そして肌に悩むすべての皆さまにますます求められていく、本質的なスキンケアのあり方なのではないかと強く感じています。

 

23年前の処方を見返してみました

 

このコラムを執筆しながら、ふと私は今から23年前に私たちが開発した「シャレコ」の最初の処方箋(全成分表)を今一度、じっくりと見返してみました。

 

23年経った今でも、ほとんどのアイテムが処方変更していません。だから、いま美容業界を賑わせているような、華やかで、最先端の成分の名前はひとつもありません。

 

並んでいるのは、

 

・PCA-Na(肌の天然保湿因子「NMF」を構成する代表的な主成分)

・ベタイン(優れた保水力と優れた肌親和性を持つアミノ酸系成分)

・アラントイン(肌あれを防ぎ、健やかで滑らかな肌コンディションを保つ成分)

・グリチルリチン酸2K(甘草の根から抽出され、肌を優しく整える歴史ある成分)

 

といった、非常にクラシックで、地味とも思える成分ばかりです。

 

しかし、これらはすべて「肌が本来持っている保湿機能を損なわず、むしろそれを助け、健やかな肌環境のサイクルを狂わせずにサポートする」という確固たる目的のもと、パズルのピースを合わせるように、結果を出すために徹底的にこだわり抜いて選ばれた成分たちです。

 

それを当時は、有効成分の規制が出る前でしたので、高濃度配合されています。

 

今、改良して処方を組み直したら、これまで入れていた高濃度の配合はできなくなります。

 

高濃度配合されていても、23年間で大きなトラブルが一度も起きていないのが安全を意味していると思っています。

 

この処方は正直正解だったと年月が証明してくれているとも思います。

 

当時、美容界が濃厚な油分でのフタをするオイル美容に熱中する中で、私たちが「保湿ではなく、まずはお肌自体の『保水』(水分を蓄える力)が最も大切です」と頑なに、そして愚直にお伝えし続けてきたのも、決して一時の流行を先取りして目立ちたかったからでもなく、ただひたすらに、目の前の「肌の仕組み」しか考えていなかったからなのです。

 

 

世界中の最先端の皮膚科学研究を読めば読むほど、新しい魔法のような答えがあるかもと探していたはずの私たちが、気づけば23年前に自分たちが信じて作り上げた「原点」に、吸い寄せられるように戻ってきてしまいます。

 

それはきっと、時代の流行やテクノロジーがどれほど目まぐるしく変わろうとも、私たちの大事にしている「肌の仕組みそのもの」は、数千年前から、そしてこれからも、何ひとつ変わることはないからなのでしょうね。

 

私たちはこれからも、貪欲に新しい成分や新しい科学を学び続けます。

 

しかし、それらを私たちの製品に採用するか、あるいは皆さまにおすすめするかを決める判断基準は、いつの時代も、たったひとつしかありません。

 

「その成分は、肌が本来持っている力を、邪魔せずに引き助けているだろうか」です。

 

流行に流されず、奇をてらわず。 これからも、この温かく、そして妥協のない視点だけは片時も手放さずに、一生涯にわたって皆さまの大切なお肌と真摯に向き合い、寄り添い続けていきたいと思っています。

 

先日、20年以上ご愛顧くださっているお客さまから、「シャレコさんの化粧品は、似たような製品を探そうと思っても、他では絶対に見つけられないほど、ここにしかない化粧品ですよね。」と言っていただきました。

 

とても嬉しかったのと、お役に立てた喜びが、さらに明日への原動力になっています。

 

最後に、わたしたちの肌には、美しくなる力が、最初からちゃんと備わっています。

 

どうかその力を、信じてサポート化粧品を上手に使って、どうか本来のキレイで健康な肌で居続けてくださいね。

 

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  • スキンケアコラム著者
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北林 利江

北林 利江

シャレコ株式会社 創業者 スキンケアカウンセラー

・1997年よりスキンケアカウンセラー。 ・2004年ウェブサイト「シャレコ美肌カレッジ」立ち上げ。 ・同年ウェブでの無料肌相談を開始。 ・同年シャレコスキンケア製品を発表。 ・スキンケアカウンセラーとしてアドバイス実績10万人を超える。 ・ミスユニバース ビューティーキャンプ講師。 ・スキンケアメルマガ「シャレコレター♪」は20年間週一回発行。 ・肌トラブル向け特に敏感肌、乾燥肌へのスキンケアアドバイスには好評を得ている。

  1. 今、「肌を治す」ことを諦め続けている。

  2. 本当は、毛穴は開いているのではありませんでした。

  3. 夏の肌が本当に求めている「 10分間のよみがえる時間 」

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